今日も会社はあります

社長をしています。インドで僧侶も少ししています。 会社のこと、家族のこと、病院のこと、たまに海の向こうの面倒なこと。 だいたい大変ですが、今日も会社はあります。

第31回 松葉杖が一本になっただけで、駅前が富士山になりました

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本日は病院でした。

診察の結果、ついに松葉杖が一本になりました。

いやあ、めでたいですね。

めでたいと言っても、紅白に出るわけではありません。

ただ棒が一本減っただけです。

でも本人は、だいぶ浮かれています。

二本から一本。

数字にすると、小学生の引き算です。

ところが体感は、刑期が半分になったくらいの開放感があります。

松葉杖界のベテラン選手から、ようやく若手くらいになりました。

まだ引退ではありません。

でも、ベンチからグラウンドは見えてきました。

次はリハビリです。

いつもの先生に加えて、学生の見習いさんがついていました。

女性でした。

急に呼吸がちゃんとできます。

不思議ですね。

膝は痛いのに、なぜか姿勢だけ良くなります。

人間の体は複雑です。

膝の曲げ伸ばしをしているのに、顔だけキリッとしています。

先生の説明も、今日はやけに真面目に聞きました。

普段聞いていないみたいですが、そんなことはありません。

たぶん。

いや、少しはあります。

人間なので。

結果として、リハビリは好調でした。

もちろん、見習いさんのおかげではありません。

医学の力です。

たぶん八割くらい。

残り二割は見栄です。

病院が終わったあと、昼飯を食べようと思いました。

松葉杖も一本になったことですし、駅まで行くことにしました。

少し冒険です。

子どもが補助輪を外した日の気分に近いです。

ただし、こちらはおじさんです。

ところが、一本になると、これがまた難しい。

二本の時は、両脇で支えてもらえました。

一本になると、急に自立を求められます。

足が、

「聞いてないですよ」

みたいな顔をしています。

いや、足に顔はありません。

でも、雰囲気です。

社会復帰初日の新人みたいでした。

いつもの定食屋に向かいました。

いっぱいでした。

人生って、そういうものです。

頑張った日に限って、席がありません。

店の前で一瞬だけ空を見ました。

ドラマなら意味ありげです。

実際は、ただ疲れただけです。

仕方ないので、コンビニへ行きました。

現実は、だいたいコンビニに着地します。

病院。

リハビリ。

駅まで歩く。

定食屋満席。

コンビニ。

会社へ戻る。

文字にすると、町内会の回覧板くらい平和です。

でも体感は完全に登山でした。

しかも富士山です。

駅前なのに、なぜか標高が高い。

信号待ちが山小屋です。

コンビニまでですけど。

会社に戻った頃には、かなり疲れていました。

仕事はまだしていません。

昼飯を探しただけです。

なのに達成感だけは一流です。

オリンピック帰りみたいな顔をしています。

回復途中の体というのは正直です。

社長の予定も、締切も知ったことではありません。

膝には膝の事情があります。

今日は松葉杖が一本になりました。

リハビリも順調でした。

駅まで行きました。

定食屋には振られました。

コンビニで昼飯を買いました。

会社に戻りました。

それだけです。

それだけなんですが、本人としては大冒険でした。

ただ、おじさんが一本の松葉杖で昼飯を探しただけです。

でも、昨日より少し遠くまで行けました。

それは、なかなか悪くありません。

遅いです。

地味です。

しょぼいです。

でも、前には進んでいます。

疲れたので寝ます。

今日はもう寝ます。

富士山に登った人は、寝ていいでしょう。

駅前ですけど。

今日も会社はあります。

でも、まず寝ます。

また書きます。たぶん。