
本日は病院でした。
診察の結果、ついに松葉杖が一本になりました。
いやあ、めでたいですね。
めでたいと言っても、紅白に出るわけではありません。
ただ棒が一本減っただけです。
でも本人は、だいぶ浮かれています。
二本から一本。
数字にすると、小学生の引き算です。
ところが体感は、刑期が半分になったくらいの開放感があります。
松葉杖界のベテラン選手から、ようやく若手くらいになりました。
まだ引退ではありません。
でも、ベンチからグラウンドは見えてきました。
次はリハビリです。
いつもの先生に加えて、学生の見習いさんがついていました。
女性でした。
急に呼吸がちゃんとできます。
不思議ですね。
膝は痛いのに、なぜか姿勢だけ良くなります。
人間の体は複雑です。
膝の曲げ伸ばしをしているのに、顔だけキリッとしています。
先生の説明も、今日はやけに真面目に聞きました。
普段聞いていないみたいですが、そんなことはありません。
たぶん。
いや、少しはあります。
人間なので。
結果として、リハビリは好調でした。
もちろん、見習いさんのおかげではありません。
医学の力です。
たぶん八割くらい。
残り二割は見栄です。
病院が終わったあと、昼飯を食べようと思いました。
松葉杖も一本になったことですし、駅まで行くことにしました。
少し冒険です。
子どもが補助輪を外した日の気分に近いです。
ただし、こちらはおじさんです。
ところが、一本になると、これがまた難しい。
二本の時は、両脇で支えてもらえました。
一本になると、急に自立を求められます。
足が、
「聞いてないですよ」
みたいな顔をしています。
いや、足に顔はありません。
でも、雰囲気です。
社会復帰初日の新人みたいでした。
いつもの定食屋に向かいました。
いっぱいでした。
人生って、そういうものです。
頑張った日に限って、席がありません。
店の前で一瞬だけ空を見ました。
ドラマなら意味ありげです。
実際は、ただ疲れただけです。
仕方ないので、コンビニへ行きました。
現実は、だいたいコンビニに着地します。
病院。
リハビリ。
駅まで歩く。
定食屋満席。
コンビニ。
会社へ戻る。
文字にすると、町内会の回覧板くらい平和です。
でも体感は完全に登山でした。
しかも富士山です。
駅前なのに、なぜか標高が高い。
信号待ちが山小屋です。
コンビニまでですけど。
会社に戻った頃には、かなり疲れていました。
仕事はまだしていません。
昼飯を探しただけです。
なのに達成感だけは一流です。
オリンピック帰りみたいな顔をしています。
回復途中の体というのは正直です。
社長の予定も、締切も知ったことではありません。
膝には膝の事情があります。
今日は松葉杖が一本になりました。
リハビリも順調でした。
駅まで行きました。
定食屋には振られました。
コンビニで昼飯を買いました。
会社に戻りました。
それだけです。
それだけなんですが、本人としては大冒険でした。
ただ、おじさんが一本の松葉杖で昼飯を探しただけです。
でも、昨日より少し遠くまで行けました。
それは、なかなか悪くありません。
遅いです。
地味です。
しょぼいです。
でも、前には進んでいます。
疲れたので寝ます。
今日はもう寝ます。
富士山に登った人は、寝ていいでしょう。
駅前ですけど。
今日も会社はあります。
でも、まず寝ます。
また書きます。たぶん。